「こんな円高ではやっていけない」という自動車産業関係者の悲鳴。「大丈夫。ほっときゃ円安になります」と胸をたたく人がいる。フジマキ・ジャパンの藤巻健史社長。米モルガン銀行東京支店長の時に巨額の利益を上げ、ヘッジ・ファンドのジョージ・ソロス氏の投資アドバイザーを務めた「伝説のディーラー」は先行きをどう読むか。(聞き手は浜田基彦)

フジマキ・ジャパン社長 藤巻 健史氏

 震災からの復興、東京電力の福島第1原子力発電所の後始末――日本の財政はますます苦しくなる。ことし6月の段階で国の借金は944兆円、毎年10兆円ずつ返しても94年かかる。2011年の歳入が48兆円、10兆円返すには38兆円しか使えないはずなのに、92兆円使おうとしている。借金は増える一方だ。
 返す方法が一つだけある。ものすごいインフレにすることだ。インフレにして944兆円の価値を下げてしまえばいい。こう言うと国が借金を返すために意図的にインフレにするように聞こえるが、そんな“悪政”はできないし、その必要もない。市場メカニズムが自律的にインフレにしてくれる。
 この状況が続くと、ある日、日本の国債は市場で売れ残るだろう。「国債が民間で消化できない」ということは「財政が破綻した」ことを意味する。そのニュースが流れた瞬間、円は急落する。中央銀行の保証あっての通貨だから、破綻した国の通貨など誰も欲しくない。極端な場合「円は受け取れない。ドルで払え」という事態になる。

以下、『日経Automotive Technology』2011年11月号に掲載