三菱自動車工業は2011年8月、愛知県岡崎市にある名古屋製作所の塗装工場を新設したと発表した。新しいロボットを導入し、建物の構造を工夫、塗料を変更して塗装工場の生産コストを約30%、エネルギ消費量を約25%、VOC(揮発性有機化合物)の発生量を約65%減らした。名古屋製作所では小型SUV「RVR」や小型車「コルト」を生産し、能力は年21万台である。投資額は約150億円。

 発表に合わせて、報道陣に新設した工場を公開した。製造コストの削減は、中塗りと上塗りの工程で(1)塗装用ロボットの台数を減らしたこと、(2)新しい塗装ガンを導入してムダな塗料を減らしたこと、(3)下塗りのどぶ漬け工程に「世界で初めて」(三菱自動車)の車体の搬送機を導入してラインを短くしたことで実現した。
 (1)のロボット台数の削減では、これまで中塗りと上塗りの工程にあった18台のロボットを14台に減らした。従来機より約40%軽い安川電機製のロボットを使い、これまで床に設置していたロボットを壁面の高い位置に取り付け、ロボット1台当たりの塗装範囲を広げて実現した(図)。
 車体の上部を塗装する場合、従来の床置きのロボットでは搬送ラインの左右に1台ずつ置く必要があった。壁面の高い位置に取り付ければ1台で車体上部のほぼ全面を塗装できる。ロボットの台数が減って設置面積が少なくなることで中塗りと上塗りのラインの長さを153mから146mに短くでき、これもコスト削減に寄与した。

以下、『日経Automotive Technology』2011年11月号に掲載
図 高い位置に取り付けた塗装用ロボット
(a)安川電機製の軽いロボット。(b)高い位置に置くと塗装範囲が広がる。従来は床に置いていた。