独自の超高真空技術やプラズマ技術を用いて真空機器や研究開発機器を設計・製造するアリオス(本社東京都昭島市)は、液体中のプラズマ(液中プラズマ)を利用してナノ粒子や酸性水を製造する技術を開発した。液中プラズマは、真空中や気体中で発生させる通常のプラズマよりも原料供給が豊富になるため、同じ反応プロセスで比べればより速く進行する。同社はこうした生産性の高さを生かして、早期の実用化を目指す構えだ。

 同社の液中プラズマは、マイクロ波を用いて発生させることから「マイクロ波液中プラズマ」と呼ばれる。図は試作装置だ。主に、出力1.5kWのマイクロ波電源と導波管、同軸導波管変換器、反応容器から成る。電子レンジと同様にマグネトロンから出力されたマイクロ波は、導波管と同軸導波管変換器を通して液体中に放射される。すると、マイクロ波によって液体中に気相が生じ、そこにプラズマが発生する。「気体中よりも電子の運動がイオンに伝わりやすく、温度が急激に上昇する」(同社取締役開発部長の佐藤進氏)。具体的には、「同軸導波管変換器の先端部に用いるタングステンが溶けるほど」(同氏)というから、3000℃くらいに達する。

 実際に液中プラズマを生成するとなると、真空中や気体中に比べて格段に難しいようだ。電界強度が真空中の数百倍必要になるため、同社は同軸導波管変換器を工夫し、先端部にテーパを付けた。先がとがるほどマイクロ波が集中して電界強度が高まり、液中プラズマが発生しやすくなるのだ。

〔以下、日経ものづくり2011年10月号に掲載〕

図●液中プラズマの試作装置
比較的簡単な構成。マイクロ波電源には電子レンジに利用するものを使えるので、低コスト化が期待できる。