今回から、江戸時代末期に創業した和洋菓子メーカーの津具屋製菓(本社長野県・高森町)にカイゼンの舞台を移し、現場スタッフが自律的に人と物を管理できるようにする方法を学ぶ。

 山田日登志氏が同社の本社工場を訪れたのは、2011年6月初旬。午前11時に到着し、工場を一巡した山田氏は、ある工程の前で足を止めた。菓子の詰め合わせの仕上げラインだ。菓子の入った箱を自動包装機で包装し、ラベルを手で貼った後、完成した箱を出荷用の段ボール箱に梱包するラインである。山田氏が目を向けていたのは、このラインを担当する作業者だ。箱や包装紙を探しに行くためか、同ラインのある部屋から出たり入ったりしている。

 山田氏は管理者たちを集めるや、突如、こんな質問をした。

「今日は何を何箱造りますか? 作業者はそれが分からんから、午前中は準備ばかりしてムダにしとるんだよ」

 作業者が毎日、速やかに仕上げの準備をするためには、現場に、ある物を導入する必要があった。それは何か。

〔以下、日経ものづくり2011年9月号に掲載〕

山田日登志(やまだ・ひとし)
トヨタ生産方式を270社に導入した経験を持つコンサルタント。岐阜県生産性本部在籍中に大野耐一氏と出会い、1971年から師事。1978年にカイゼン・リーダーを育成するPEC産業教育センターを設立し、所長に就任。ソニーを指導中にセル生産の基礎を築いた。