「この手法に出合ってからは、カラカラに乾いていると思い込んでいた雑巾がまだ絞れることに気付いた」。こう話すのは、自動車フレームなど板金加工部品を手掛ける深井製作所(本社栃木県足利市)で、技術本部開発部開発課課長を務める須永行氏だ。同氏は5年以上も前から幾度となくその手法を試し、成果を確認してきた。その手法こそが、製品設計から量産準備に至るまでを1人の技術者が担当する、名付けて「一人屋台設計」である。その最大のメリットは、短納期・低コスト・高品質を同時に、しかも従来のやり方をはるかにしのぐ高いレベルで達成できる点だ。

効果は驚異的

 こう聞けば、大抵の技術者は「そんなことはムリに決まっている」と反論するだろう。それを実現するには製品設計から量産準備までの幅広い知識と経験が必要だし、そんなマルチスキルを身に付けるのには長い時間と労力が要ると考えられるからだ。しかし、須永氏は「一人屋台設計のハードルはそこまでは高くない」とする。「自分自身も決してスーパーマンではないが、やってみたらできた。実際にやってみると、そのあまりの効果の高さに『やらない手はない』と感じるだろう」(同氏)。

〔以下、日経ものづくり2011年9月号に掲載〕