2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の東日本大震災による津波の深刻な影響は、東京電力の福島第一原子力発電所と福島第二原子力発電所のみならず、日本原子力発電の東海第二原子力発電所にも及んでいた。

 筆者は東日本大震災から4カ月半が過ぎた2011年7月26日、東海第二原発の野外施設を見学する機会を得た。本稿では、津波の被害を受けながらも辛うじて大事故を免れた現場の様子を紹介する。

リスク分散で最悪事態を回避

 東海第二原発の原子炉建屋とタービン建屋を含む大部分の敷地は、海抜約8mに立地する。ただし、海岸線の幅約50×長さ数百mの区域に関しては海抜約2mにすぎない。それにもかかわらず、特別な防潮堤は築かれていない。そんな無防備な海岸線には高さ約3mの鉄筋コンクリート製ピットが3区画あり、中には海水冷却ポンプなどの野外施設が設置されている。

 実は、同原発では非常用ディーゼル発電機の海水冷却ポンプ3台と残留熱除去系の海水冷却ポンプ6台を備えるが、それらは1つのピットに収納せず、3つのピットに分散して置かれている。つまり、1つのピットには非常用ディーゼル発電機の海水冷却ポンプ1台と残留熱除去系の海水冷却ポンプ2台が収納されているのだ。

〔以下、日経ものづくり2011年9月号に掲載〕