テレビとインターネットの融合に向けた取り組みが米国で加速している。その主役は、スマートフォンやタブレット端末といった携帯端末だ。これまでテレビに搭載されていた多くの基本機能は、Webサービスを軸に携帯端末に移行する。テレビを“スマート”にする進化は、携帯端末やWebサービスとの連携を前提に進む。

見え始めた新たな“テレビ”の姿

 「本当にテレビという機器を“スマート”にする必要があるのか」という、テレビ・メーカーが頭を痛めかねない議論が米国を中心に広がっている。

 メディアとしてのテレビとインターネットを結び付け、新たなサービスを実現する「スマートテレビ」の取り組みは、かつてない盛り上がりを見せている。だが、二つのメディアの融合で中心にいるのは、大画面テレビではない。主役は、猛スピードで普及するスマートフォンやタブレット端末といった携帯端末だ。

 キーワードは、「マルチスクリーン」。薄型テレビの大画面と、携帯端末の小さな画面を組み合わせたサービス提供を指す。テレビ番組やVOD(ビデオ・オン・デマンド)を携帯端末で視聴できるようにするとともに、テレビや録画機器のリモコン機能、動画の検索/推薦にも携帯端末を活用する。こうした連携機能を実現する際の、テレビと携帯端末を結び付ける連結点がWebサービスだ。

 重要なのは、これが携帯端末を大画面テレビの補助用に使う動きではないこと。むしろ、その逆で、テレビの基本機能の多くはWebサービスを軸に携帯端末に移行する。テレビと携帯端末、Webサービスの3者を組み合わせた「システムとしての新しいテレビ」を創出する潮流が、急速に広がろうとしているのだ。

ネット動画への危機感が後押し

 このマルチスクリーン化を象徴する取り組みが、米ケーブルテレビ(CATV)大手のTime Warner Cable(TWC)社が2011年3月に始めた新サービスだ。同社が提供するCATV番組を、米Apple社のタブレット端末「iPad」で視聴できるようにした。「どこでもテレビ(TV Everywhere)」と呼ばれる取り組みの一つである。

『日経エレクトロニクス』2011年7月25日号より一部掲載

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