パワーデバイスはパワー半導体とも呼ばれる、電力の変換や制御を行う半導体である。大げさかもしれないが、電気で駆動するものでパワーデバイスが搭載されていない製品はないといってもいいかもしれない。VTRやオーディオ機器、エアコン、電子レンジなど身近にあるものから、産業用ロボット、ハイブリット車/電気自動車、各種電源機器、電車/新幹線、電力の系統制御などにも使われている。我が国の企業が最初に発明し、これからの時代においても大きな期待が寄せられているスーパーデバイスである。

 実際、我が国はもとより、世界中の原子力発電所に厳しい目が向けられる中でエネルギの多様化はますます進んでおり、パワーデバイスの貢献度は増すばかりだ。例えば、風力発電機に使われるパワーデバイスでは、2500A/1200Vを制御しているという。従来のスイッチング装置では、特にその耐久性において到底対応できなかった大電流高電圧の制御がこのパワーデバイスによって容易にコントロールできるようになるのだから、まさにパワーデバイス様々だ。

 このパワーデバイス技術の高度化と、安全性・信頼性を高めるための研究をしようという団体「パワーデバイス研究会」が、アドバンテストの支援によって設立された。そして、なんと、その事務局長にこの鉄人が就任することになってしまった。

〔以下、日経ものづくり2011年8月号に掲載〕

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立、代表取締役に。現在、40数社の顧問、日本知的財産戦略協議会理事長、宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー、日本特許情報機構理事、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。