毎日のように乗っているエレベータ。これだけ身近にあると、いちいちありがたいと思うことはほとんどない。もっとも、このたびの震災後に停電や節電で止まったときには、さすがにエレベータのありがたみを再認識した人も多かったのではなかろうか。
では、そのエレベータのドア周辺に配置され、開閉時に人や物がドアに挟まれないようにしているセンサをありがたいという人は、どのくらいいるだろう。普段は気付かないセンサだが、検知せずに人がドアに挟まれたらそれこそ一大事、エレベータが凶器になってしまう。そんな重要な任務を持つセンサを一筋に造り続けて36年になるメーカーがある。
愛知県春日井市に本社を置く、産業用電機制御総合メーカーの東洋電機だ。同社によると、センサというものは目立ったり邪魔になったりしてはいけないのだという。センサはあくまで脇役で、その存在を感じさせないことが大切だというのだ。
確かに、守護神といわれる存在は、普段は気付かないことが多いかもしれない。守護神で思い出すのは、2010年のFIFAワールドカップだ。ゴールキーパーの神懸かり的な守りで勝ち抜いた日本チームだが、このキーパーは守護神といわれた。普段は派手ではないが、まさにイザというときの大活躍だった。
さりげなくまもる(守る、護る)。神様だろうと人間だろうと、いつもは目立たないけれどイザというときにこれほど頼りになる人はいないとあらためて思い知る存在。守護神とは、そういうものだ。
まもるとは、目を離さずにいることであり、様子を見定めることであり、警戒を怠らずに危害や危険が及ばないようにすることである。そして、ひとたび約束したことを破らないことでもある。
実直にエレベータのセンサを開発し、エレベータをまもり続けている東洋電機。目立たないかもしれないが、まさにエレベータの守護神といえる存在なのだ。
〔以下、日経ものづくり2011年7月号に掲載〕
システム・インテグレーション 代表取締役