省スペースや多機能といったユーザーニーズに対応するため、従来は別々の製品として提供していた機能を1つの製品の中に統合することがある。その典型が、洗濯機能と乾燥機能を1つの製品の中に盛り込んだ洗濯乾燥機だ。洗濯乾燥機で起きた、ある事故の原因を分析してみると、洗濯機や乾燥機それぞれでは発生しないことが分かった。

 2008年4月、東芝ホームアプライアンスが洗濯乾燥機の無償点検・修理を実施するというリコールを告知した。対象となる製品は2002年8月~2003年8月の間に製造したドラム式洗濯乾燥機で、2006~2008年の間に4件の発煙・発火事故が発生していたためだ。

 事故はいずれも、本体内に垂れ落ちた液体洗剤がリード線に付着し、液体洗剤の成分(表面活性剤)によってリード線の塩化ビニル製被覆材が侵されて絶縁が劣化。その結果、トラッキング現象が発生して事故に至った可能性があると考えられた(図)。

 2009年6月には、上記と同様の原因の事故が別の機種で発生し、同年8月に類似機種のリコールを告知。2008年にリコールした機種でも、2009年7月に同様の事故が発生した。

 これらを受けて同社は、(1)洗剤が付着しないようにリード線の配線経路を変更した上で、リード線を交換する、(2)構造上、配線経路の変更が困難な機種については、液体洗剤による絶縁の劣化が生じないシリコーンチューブで覆ったリード線と交換する、という対策を実施した。

〔以下,日経ものづくり2011年7月号に掲載〕

図●トラッキング現象の発生プロセスと対策
リード線に付着した液体洗剤と被覆材の化学反応が高温で加速された。リコールにおける無償修理では、リード線の経路を変更したり、リード線の被覆をシリコーンチューブにしたりという対策が実施された。