東海大学総合科学技術研究所教授 林 義正氏
日産自動車の元エンジニアであり、1気筒当たり2プラグの「Zエンジン」や、ベアリングキャップを結合した「ベアリングビーム」の開発を手がけた。その後東海大学に転じ、2008年にはル・マン24時間レースに、大学の学生チームとしては世界初の参戦を果たした。

 東海大学総合科学技術研究所教授の林義正は、日産自動車の元エンジニアである。「急速燃焼方式を採用した小型ガソリン機関の開発」で1979年に機械学会賞・技術賞を、1982年には「エンジン運転中のクランク軸及び主軸受部の運動解析」で自動車技術会の浅原賞学術奨励賞を受賞。さらに、「ベアリングビームによるエンジン騒音低減」で1985年に科学技術庁長官賞を受賞するなど、日産エンジンの排ガス対策や振動騒音改善に大きく貢献してきた。
 燦然(さんぜん)たる実績を残す林ではあるが、1962年の入社以来、林の前に常に立ちはだかったのは、過去の慣例や、その道の権威と言われる人々だった。
 「集積された過去の体験から“いいとこ取り”することを、上司たちは好んだが、私にとっては耳障りで、大嫌いだった」と、著書『世界最高のレーシングカーをつくる』(光文社新書)で林は述べている。

以下、『日経Automotive Technology』2011年7月号に掲載