Intel社が岐路に立たされている。パソコン向けマイクロプロセサの覇権を握り続けてきた同社は、「ポスト・パソコン」との呼び声も高いタブレット端末の台頭に直面している。x86系の採用が必須ではないこの新市場にどう向き合うのか。タブレット端末の巨大市場に育つことが確実視される中国で、その戦略を打ち出した。

 「2011年1~3月の売上高は、四半期ベースで過去最高を記録した。通年では前年比で20%を超える成長を遂げられるだろう」(米Intel社 President&CEOのPaul Otellini氏)。

 半導体最大手のIntel社が2011年4月に発表した同年1~3月期決算は、市場関係者の予測を大きく上回った。全社売上高は前年比25%増の128億米ドル、営業利益は同21%増の42億米ドルだった。すべての製品分野と地域で前年比2桁成長を達成し、圧倒的な強さを見せつけた。

 だが──。Intel社が今後も長期間、安泰だとみる業界関係者はむしろ少数派だ。ここ1年間で、パソコン市場の様相が一変したからである。

 その変化とは、米Apple社が2010年4月に「iPad」を発売し、その成功によって「タブレット端末」という新市場が立ち上がったことだ。タブレット端末は、携帯性の高さや瞬時の起動、マルチタッチ対応のユーザー・インタフェース(UI)など、使い勝手の良さから、パソコンの強力なライバルになると目されている。

 Intel社にとって悩ましいのは、タブレット端末ではソフトウエア基盤やマイクロプロセサの選択の自由度が高いことである。米Microsoft社のソフトウエア基盤「Windows」と、Intel社のx86系マイクロプロセサが標準搭載されているパソコンでの“勝利の方程式”が通用しないのだ。

『日経エレクトロニクス』2011年5月16日号より一部掲載

5月16日号を1部買う