東日本大震災の犠牲になられた方、被災された方に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。今回の災害で多くの工場が操業休止に追い込まれ、雇用を含む日本経済が影響を受けています。製造業に携わる私としても心痛の思いです。
しかし、下を向いてばかりではいられません。災害は、人間の力ではどうしようもないところと、防災対策によって被害を最小に抑えられるところがあります。今回の災害では「想定を上回る津波だった」「1000年に1度の大地震だった」と報道されていますが、防災対策の水準を高めていけば、被害を防げたり最小限に食い止めたりすることができるはずです。
世界の人々が日本製品の品質の高さを賞賛し、それに信頼を寄せてくれています。背景には、日本企業が経験から学び、品質低下に関する予防措置を講じて、その水準を高めてきたという事実があります。例えば、酷暑の真夏や氷点下になる真冬に、屋外でも製品が安定して動くような設計の工夫から、輸送中に運搬員が乱暴に扱っても壊れないように衝撃を緩和する梱包対策まで、ありとあらゆる予防措置を日本企業は考案して実践してきました。これが日本製品の品質の高さを支えているのです。
災害に対しても同じことがいえると思います。今回のつらい経験から学び、防災対策の水準を高めて、より強い日本の製造業を築き上げること。これが今、日本人技術者である私たちに求められていることではないでしょうか。
気を付けなければならないのは、昨今の急速なグローバル化で、防災対策が必要なのは日本だけではなくなっていることです。海外に設けた生産拠点や販売拠点、事務所における防災対策も日本と同様に大切になってきています。
〔以下、日経ものづくり2011年5月号に掲載〕
技術者・海外進出コンサルタント