【強さの秘密】イオンの特性に着目して、ファンや圧縮空気を使用しない無風型の除電器を業界に先駆けて開発した。同社の製品は、自動車の塗装ラインや電子機器の製造工程など、静電気とホコリ対策に悩まされている生産現場にとって特効薬になりつつある。

 生産現場にとって、静電気は悩みの種。しばしば静電気が原因で半導体のパターンが溶断したり、プラスチックやガラスの表面にホコリが付いたりして不良品が発生する。そこで、電子機器の製造工程や塗装ラインなどで使われているのが、イオンで静電気や帯電したホコリを除去(除電)する静電気除去装置(除電器)である。

 TRINCは、この分野で独自の除電方式を採用した製品を開発した。それまでの除電器はイオンを飛ばすためにブロアやエアガンを使っていたが、2002年に発売した「空間TRINC」は、生産ラインの空間を丸ごと、しかも無風で除電できるという点が高い評価を得た。例えば、これを同製品を最初に採用したトヨタ自動車では「プリウス」の塗装ラインで静電気とホコリに起因する不良率を16%低減、リンナイではガスコンロの塗装ラインで同75%低減した。その他、大手自動車メーカーや電子機器メーカーも相次いで採用しているという(図)。

 今ではTRINCの主力製品となっており、韓国LG Display社をはじめ、海外メーカーも採用し始めている。

〔以下、日経ものづくり2011年5月号に掲載〕

図●いすゞ自動車の塗装のテストラインに採用されている空間TRINC
左右の天井付近に、水平につり下げられている。ホコリを除電して塗装面への付着を防ぐ。