インフルエンザ・ウイルスの特定や犯罪捜査など、さまざまな分野で活用されているDNA検査。現在は専門研究者が作業や解析を行っているが、もっと手軽にできるようになるかもしれない。そのための装置を開発したのは、主にFA用の計測機器や制御機器を手掛ける協立電機だ。生産現場で培った技術を応用し、大手電機メーカーさえも断念したDNA検出器の開発に成功した。

 「理論だけは昔からあった。それを実現したのが今回の装置」。協立電機代表取締役社長の西雅寛氏は、同社が開発したDNA検出器「KD2100」について、こう語る(図)。DNA検出器とは、文字通り、検体に特定のDNAが含まれているか否かを判定する装置だ。例えばインフルエンザの検査であれば、そのインフルエンザ・ウイルスに特有のDNAの有無を調べる。

 KD2100の特徴は、一般的なDNA検査の手法であるポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)と異なり、電圧をかけると電流が流れる酵素(発電酵素)を使うバイオ・エレクトロニクス方式を採用したことだ(表)。特定のDNAと結合する発電酵素により、DNAの量を電気的に計測する。「詳しくは言えないが、どのDNAにどのような発電酵素が結合するかは既に分かっているので、検出したいDNAに合わせて発電酵素を使い分けている。そうした酵素は、比較的簡単に用意できる」(西氏)という。

〔以下、日経ものづくり2011年4月号に掲載〕

図●DNA検出器「KD2100」
持ち運びしやすい大きさと重さな上、2次電池による駆動にも対応しており、屋内だけではなく屋外でも使用できる。2009年ごろから開発に着手した。