面白いものだ。すぐにカッとなる人と冷静な人は、一体、何がどう違うのだろう。人体を構成する材料はほとんど同じだから、多分、精神的な構造の違いなのだろうが、それにしてもなぜこんなに違うのか。カッカとなりやすい人はこちらが言い終わる前にチンチンに熱くなっているし、嫌になるほど冷静な人は何を言ってもシラっとしていて、まるでカエルの面にナントカ状態だ。

 鉄人が思うに、脳ミソの“熱物性”が違うのではないだろうか。すぐにカッとなる人は外部からの刺激が伝わりやすい、つまり脳ミソの“熱伝導率”がすこぶる高いのですぐに刺激(熱くなる情報)が伝わり、その結果、“行動回路”が激しく反応する。対して、冷静な人は熱伝導率が低いので、そう簡単には刺激が伝わらない。刺激がなかなか伝わらないので刺激への対応をどうするかをよく考える時間があり、その結果、冷静沈着な行動を取ることができる──。ただ、それは言い方を変えれば「鈍い」ということであり冷静沈着とは違うので、結局はよく分からない。

 いきなり、人間の脳ミソの熱物性などと変な物言いをしたが、これが材料であるなら、よく分からないでは済まされない。「この材料は、理由は分かりませんが、すぐカッと熱くなるんですよ」などと言ったら、怒られるのを通り越して、職を失うことになるかもしれない。

〔以下、日経ものづくり2011年4月号に掲載〕

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立、代表取締役に。現在、40数社の顧問、日本知的財産戦略協議会理事長、宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー、日本特許情報機構理事、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。