写真:栗原克己

 正直に言って、今は仕事を出す側が優位に立っています。仕事を受ける側が海外まで広がっているから、選びたい放題。そのあおりを食って、日本ではものづくりをする中小/零細企業が減りました。集積地の代表格である東京の大田区では9000社が4000社弱に、大阪の東大阪市では1万社が5000社ぐらいに減ったと聞いています。

 つまり、グローバル化の進展に伴い、供給メーカー過剰に陥ってしまったのが原因です。仕事量に対して受ける側の方が断然多いから、低価格で仕事を受ける動きがどんどんと出てきている。ただ、それももう限界に来ていて、倒産したり廃業したりする中小/零細企業が増えたんです。

 仮に、このまま日本の下請け企業や協力企業が消えた場合に、大手企業はこれまでのような国際競争力のある商品を、これまでのような価格競争力で造り続けることができるのか。私は難しいと思う。
〔以下、日経ものづくり2011年4月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

梅原 勝彦(うめはら・かつひこ)
エーワン精密 取締役相談役
1939年東京生まれ。父の経営する会社が倒産し、12歳からねじ工場で働き始める。1965年に実兄と会社を設立し、小型自動旋盤用のカム製造を開始。1970年に独立してエーワン精密を設立し、社長に就任。徹底した短納期を武器に、工作機械用コレットチャックでは国内シェア6割を握る。2007年取締役相談役に就任し、現在に至る。