電気自動車(EV)/ハイブリッド車(HEV)向けの駆動用モータは、永久磁石埋め込み式が主流だが、産業用では誘導モータを使う製品は多い。誘導モータは構造や制御が簡単であるため、EV/HEVに使えば、コストを下げられる可能性がある。誘導モータは、低い回転域では効率が低いが、高い回転域では永久磁石式と同等を期待できる。

 東海大学は、EV(電気自動車)/ハイブリッド車(HEV)向けの駆動用モータを試作した。現在主流の永久磁石埋め込み式モータと異なる、誘導モータの構造で実現したのが特徴(図)。
 現在の試作機の最高出力は0.75kW。2012年3月までには、トヨタ自動車の先代「プリウス」(2003年発売)と同等レベル(1kW/kg)にまで性能を向上させる計画だ(表)。
 誘導モータの利点は、(1)希土類(レアアース)を使わないため希土類の調達リスクを抑えられる。(2)永久磁石を使わないため、高い回転域で逆起電力の発生が抑えられる。(3)ロータを回転させる原理が単純であるため、既存の駆動用モータに比べて低コストで設計できる―― の三つ。
 最初の利点は、希土類を使わない点だ。SR(スイッチトリラクタンス)モータやフェライト磁石を使うモータなどと同様に、ネオジム(Nd)やディスプロシウム(Dy)を使わなくても製造できる。現在は希土類の90%を中国に依存しているため、中国が輸出を制限すると、モータの量産に影響が出る可能性がある。誘導モータであれば、希土類の調達のリスクはなくなる。

以下、『日経Automotive Technology』2011年5月号に掲載
図 東海大学が試作した誘導モータ
電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)での使用を想定している。
表 試作した誘導モータの主な仕様