クルマの電動化とともに重要度が高まるパワー半導体デバイス。現在は、Si製デバイスが普及しているが、このデバイスの性能を大きく上回る次世代品の開発が進んでいる。その高い性能の理由を説明しよう。

 電気自動車(EV)やハイブリッド車に搭載されるインバータなどの電源回路。この電源回路で発生する電力損失低減の切り札と目されているのが、 SiC(炭化シリコン)とGaN(窒化ガリウム)の材料を使った次世代パワー半導体デバイスである。
 次世代パワー半導体に秘められた実力は極めて高い。例えば、インバータに次世代パワー半導体を適用すれば、現行のSi(シリコン)製パワー半導体を使った場合に比べて、出力電力や回路構成によって若干の違いがあるものの、電力損失を半分以下に抑えられる見込みだ。さらに、インバータの外形寸法や質量も削減できる。車両の小型化や軽量化が可能になるため、エネルギ利用効率を高めることにつながる。
 Si製のパワー半導体に比べると、多くのメリットを享受できる次世代パワー半導体。なぜ、高い性能を実現できるのだろうか。その答えは、SiCとGaNそれぞれの材料が備える基本特性にある。表1で注目してほしい基本特性は三つある。絶縁破壊電界と飽和ドリフト速度、そして熱伝導率である。

以下、『日経Automotive Technology』2011年5月号に掲載