低速走行では自動的にブレーキが作動して止まる“ぶつからないクルマ”が国内に登場して約1年半。最近では採用車種が拡大し、高速域まで対応するシステムの開発も進んでいる。ぶつからないクルマはどこまで進化するのだろうか。

 センサで前方の障害物を検知し、自動的にブレーキをかけることで衝突を回避するシステムを備えた“ぶつからないクルマ”の速度域が、低速域から高速域に広がろうとしている。
 スウェーデンVolvo社が2009年8月に、速度15km/hまでであれば衝突を回避するシステムを国内に導入したのに続き、2010~2011年にかけて、30km/hでもぶつからないクルマを富士重工業やドイツVolkswagen社、Volvo社が相次いで発売した。さらに日産自動車は60km/hでも衝突を回避できるシステムを開発中であることを表明している(表)。
 衝突回避システムが高速域まで広がると、どのような効果が期待できるのだろうか。自動車事故のデータの分析によると、速度域が0~30km/hまでの走行では軽傷事故が多いが、40~60km/hでは死亡事故の比率が大きくなっている。
 このデータは対自動車だけでなく、対歩行者も含んでいる。そのため、クルマだけに限らず、歩行者も含めた衝突回避システムを、富士重工やVolvo社が実用化している。衝突回避システムが高速域まで使えるようになれば、クルマと歩行者の死亡者の両方を減らせる可能性がある。

以下、『日経Automotive Technology』2011年5月号に掲載
表 各社が実用化・開発中の衝突回避システム
使うセンサ、認識する障害物、システム価格などが異なる。
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