「技術者のための最新中国事典」は、中国に詳しいコンサルタントであり、現役の技術者でもある遠藤健治氏が、最新の中国事情を伝えるコラムです。変化が激しい中国のものづくりや市場、人々の文化や習慣など、日本企業のビジネスチャンスにつながり得る「今」の情報を素早く捉え、独自の分析や対策などのヒントを技術者向けに提供します。

 サッカーの日本代表がアジア杯で目覚ましい活躍を見せました。大のサッカーファンである私は、彼らが見せる好プレーに興奮しながら応援していました。多くの日本人が私と同じように感動を覚えたに違いありません。

 日本代表は本当に強くなりました。その強さを支える大きな理由の1つは、選抜された選手の中に占める「海外組」の多さです。欧州を中心に日本よりも実力が高い海外のサッカーチームに武者修行に出掛け、世界レベルの選手とプレーして力を磨く。そうして、一回りも二回りも大きく成長して日本代表に選ばれた彼らが、日の丸を背負って国際試合で勝利を収めているのです。

 海外組が競争力を高める原動力になっているのは、台湾や香港、そして中国の企業も同じです。世界レベルの競争でもまれて実力を高めるのは、サッカー選手も技術者も変わらないと言えます。

店で機能を確認する客は今…

 中国に旅行した日本人が初めて中国製の工業製品を販売する店舗に入ると、異様な光景に出くわすことがあります。陳列されている製品を手にしたお客さんが店員を呼び出し、その店員の前でスイッチを入れてきちんと動作することをしつこいまでに確認する様子です。中には、店の奥から在庫を持ってこさせ、箱を開けて製品の機能をチェックするお客さんまでいます。

 日本製品と比べると中国製品は品質に難があるものが多く、店に陳列された段階で既に壊れている製品すら珍しくありません。中国製品の品質に「当たり外れ」があることをよく知っている中国人は、外れの製品に大切なお金を奪われることがないように、自衛手段として店先で「自前の品質検査」を行うというわけです。

〔以下、日経ものづくり2011年3月号に掲載〕

遠藤健治(えんどう・けんじ)
技術者・海外進出コンサルタント
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者で、海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場にて製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国を股に掛けて活躍中。著書に『日系中国工場製造部長奮闘記』『中国低価格部品調達記』(共に日経BP社)などがある。