前回(2011年1月号)は、工場のスタッフがトラック便に必要な物を必要な時間までに出荷場に用意するための工夫を学んだ。今回は、その前工程である組立工程や加工工程などで、必要な物を必要な時間までに用意するコツを取り上げる。舞台となるのは前回に引き続き、モータなどを開発・設計・製造・販売するシグマー技研だ。

 2010年11月某日、山田日登志氏は同社工場の出荷場を指導し終えると、モータの組立工程へと迷わず歩を進めた。出荷場に必要な物をタイミングよく用意するためには、組立工程の管理が重要になると踏んだのだ。

「今日の生産はどんだけですか?」

 組立工程に着くなり山田氏が聞くと、現場スタッフの1人が、あるものを指さしながら説明を始めた。

「今日はAという品種を45台、Bを15台、Cを200台造ります。現在は、Cを造っている最中です」
「えぇですよ。合格やな」

 山田氏がここで合格を出した「あるもの」とは何か。

〔以下、日経ものづくり2011年2月号に掲載〕

山田日登志(やまだ・ひとし)
トヨタ生産方式を270社に導入した経験を持つコンサルタント。岐阜県生産性本部在籍中に大野耐一氏と出会い、1971年から師事。1978年にカイゼン・リーダーを育成するPEC産業教育センターを設立し、所長に就任。ソニーを指導中にセル生産の基礎を築いた。