私が日本メーカーの技術者であることを知るや否や、中国人から猛烈な質問攻めに遭ったのは、ほんの10年ほど前のこと。こちらの時間もお構いなく、実に熱心に、時にしつこいほど技術やノウハウについて聞きたがる姿勢に、「まさか我々の製品の違法な模倣品(コピー商品)でも造る気では?」と身構えたものです。
よくよく話を聞いてみると、それはハングリー精神に基づく行動であることがほとんどでした。中国は世界でもトップを争うほどの激しい「実力社会」。決して豊かとはいえない社会の中で、人より少しでも高い水準の生活を送るには、さらに上の役職に昇進したり、大手企業に転職して高い賃金を得たりしなければならない。そのために役立てようと、日本を含む外資系企業で働く技術者から情報を聞き出そうと必死になっていたというわけです。
〔以下、日経ものづくり2011年2月号に掲載〕
技術者・海外進出コンサルタント