「技術者のための最新中国事典」は、中国に詳しいコンサルタントであり、現役の技術者でもある遠藤健治氏が、最新の中国事情を伝えるコラムです。変化が激しい中国のものづくりや市場、人々の文化や習慣など、日本企業のビジネスチャンスにつながり得る「今」の情報を素早く捉え、独自の分析や対策などのヒントを技術者向けに提供します。

 私が日本メーカーの技術者であることを知るや否や、中国人から猛烈な質問攻めに遭ったのは、ほんの10年ほど前のこと。こちらの時間もお構いなく、実に熱心に、時にしつこいほど技術やノウハウについて聞きたがる姿勢に、「まさか我々の製品の違法な模倣品(コピー商品)でも造る気では?」と身構えたものです。

 よくよく話を聞いてみると、それはハングリー精神に基づく行動であることがほとんどでした。中国は世界でもトップを争うほどの激しい「実力社会」。決して豊かとはいえない社会の中で、人より少しでも高い水準の生活を送るには、さらに上の役職に昇進したり、大手企業に転職して高い賃金を得たりしなければならない。そのために役立てようと、日本を含む外資系企業で働く技術者から情報を聞き出そうと必死になっていたというわけです。

〔以下、日経ものづくり2011年2月号に掲載〕

遠藤健治(えんどう・けんじ)
技術者・海外進出コンサルタント
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者で、海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場にて製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国を股に掛けて活躍中。著書に『日系中国工場製造部長奮闘記』『中国低価格部品調達記』(共に日経BP社)などがある。