「勝つ設計」は、日本のVEの第一人者である佐藤嘉彦氏のコラム。安さばかりを求めて技術を流出させ、競争力や創造力を失った日本。管理技術がこれまでの成長を支えてきたという教訓を忘れた製造業。こうした現状を打破し、再び栄光をつかむための製品開発の在り方を考える。

 前回(2011年1月号)触れた内外製の問題について、もう少し説明を加えておきたい。

 今日、レアアースやレアメタルの価格は、産地が限定されるなどの理由から高騰している。背景には、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)に搭載されるモータにネオジム・鉄・ボロン(Nd-Fe-B)系磁石が多用されるなど、たまたま自動車関連需要が急伸していることもあるだろうが、それ以上に、主たる産出国である中国に好き勝手に振り回されている感がある。実際、ちょっと国際紛争があると、産出国はすぐに強気に出て「(レアアースやレアメタルを)売らない」とくる。

 本誌2011年1月号の特集で、レアアースやレアメタルに代わる材料の研究が進んでいると、事例と共に紹介されていた。そのポイントは「(レアアースやレアメタルの)機能に立ち返れ」という点だったが、同じことを私も前々から思っていた。この原稿の下書きを始めたのは2010年の9~10月だが、その時点で既に「レアアースやレアメタルの機能は何なのか」「その機能を満たすものは作れないのか」を追究し、「好き勝手し放題の産出国をギャフンといわせてやろう」と書いていた。

 以前も、スクラップになるプリント基板に含まれる貴金属やレアメタルを低コストで回収できる方法はないかなど、資源のない日本が「資源創出国」になれないものかと考えたことがあるが、今まさに現実の問題として真正面から取り組む時が来たように思う。それには、レアアースやレアメタルの機能に立ち返り、それを満足する方法を考える。そうすれば、好き勝手し放題の産出国に頼らなくて済むはずだ。

〔以下、日経ものづくり2011年2月号に掲載〕

佐藤嘉彦(さとう・よしひこ)
VPM技術研究所 所長
1944年生まれ。1963年に、いすゞ自動車入社。原価企画・管理担当部長や原価技術推進部長などを歴任し、同社の原価改善を推し進める。その間に、いすゞ(佐藤)式テアダウン法を確立し、日本のテアダウンの礎を築く。1988年に米国VE協会(SAVE)より日本の自動車業界で最初のCVS(Certified Value Specialist)に認定、1995年には日本人初のSAVE Fellowになるなど、日本におけるVE、テアダウンの第一人者。1999年に同社を退職し、VPM技術研究所所長に就任。コンサルタントとして今も、ものづくりの現場を回り続ける。