日本を拠点にしたものづくりは今、とても厳しい状況にあります。私は、その厳しさの要因として、製造業を取り巻く「環境の問題」と「考え方の問題」の2つがあると思っています。
環境に関しては、円高や高い法人税、環太平洋経済連携協定(TPP)/自由貿易協定(FTA)への取り組みの遅れなど、競争力の根幹に関わる問題。これらをバランス良く解決していかないと、空洞化がどんどん進んでしまう。ただ、これは一企業がどうすることもできない問題なので、国を挙げてしっかり対応していくしかありません。
もう1つは、考え方の問題です。日本の製品のことを最近、よくガラパゴス化しているっていいますよね。しかし、ガラパゴス化が悪いかどうかの判断は難しい。例えば、製品を差異化するために細かいところにこだわり、その結果、必要のない機能ばかりになってしまったらダメです。
そうではなくて、何が本質的な問題なのかを突き詰めて考えなければいけない。何しろ、今みんなが欲しいものを造っていたのでは価格競争に巻き込まれるだけなのですから。そこから一歩先んじるには、まだ見えていない潜在ニーズを掘り起こさなければならない。
〔以下、日経ものづくり2011年2月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)
東芝 取締役 代表執行役社長