日経テクノロジーオンライン
雑誌 2011年1月号 Cover Story

進化する1モータハイブリッド

2010/12/01 18:09
 

アイドリングストップ機構、オルタネータによる減速エネルギの回収などでエンジン車の燃費向上が進む今、下手なハイブリッド車はその地位が危うい。ハイブリッド車が燃費で差を付けるにはモータだけで電気自動車のように走れることが欠かせない。コスト上昇を抑えた1モータ式で燃費向上に挑戦する最新のハイブリッド技術を探った。

Part 1:各社から製品化相次ぐ

11~50kWのモータ出力が増える 低コストと高効率の両立狙う

米国の燃費規制、欧州のCO2排出量規制はこれからますます強化される。特に2020年の欧州の規制はすべてのクルマの排出量をトヨタ自動車「プリウス」並みに減らさなければならない。これを達成するには、エンジンの改良と同時に、かなりのハイブリッド車を投入する必要がある。中でも注目されるのは、燃費の面で大きく進化した新しい世代の1モータ式ハイブリッド車だ。モータ出力を高めるとともにクラッチでエンジンを切り離せるタイプが登場し始めた。

 今後、自動車の燃費規制はますます厳しくなる。米国は2016年モデルで企業平均燃費として約15km/L、CO2排出量で約155g/kmを求めている。欧州のCO2排出量規制はもっと厳しく、2020年に95g/kmを達成しなければならない。これは、すべてのクルマのCO2排出量をトヨタ自動車のハイブリッド車(HEV)「プリウス」のCO2排出量89g/kmに近づけることを意味する。
 こうした燃費規制の強化に対して、どのような技術進化が必要なのだろうか。英国のエンジニアリング会社Ricardo社が考える技術ロードマップは次のようなものだ(図1)。まず、全車で車両質量および空気抵抗を低減する。さらに、アイドリングストップ機構の採用、オルタネータの充放電制御により減速時の発電エネルギを電力として蓄えることが必須になるとする。

以下、『日経Automotive Technology』2011年1月号に掲載
図1 欧州の燃費改善に向けた技術ロードマップ
全車で軽量化、空気抵抗の低減、アイドリングストップ機構の搭載が進み、大半のメーカーからガソリンハイブリッド車が登場する。(出典:英Ricardo社)

Part 2:既存部品を流用し低コスト化

クラッチでエンジンを切り離す EV走行増やし燃費1.9倍を実現

2010年は1モータ式のハイブリッド車が相次いで発売された。国内ではホンダ「フィットハイブリッド」が159万円という低価格で登場。さらに日産自動車も独自開発の「フーガハイブリッド」を11月に発売した。後者はエンジンとモータの間にクラッチを設けることで10・15モード燃費を1.9倍に改善。1モータ式ながら電気自動車(EV)走行できる領域を増やしたことが奏功した。

 1モータ式のハイブリッド車(HEV)を次々に投入しているホンダは、10月には小型車「フィット」にHEVを設定、「インサイト」より30万円も安い159万円で発売した。「使いやすく、経済的、低価格というフィットの特徴をいっさい殺さず、小型車にHEVを導入できた」(本田技術研究所四輪R&DセンターLPLの人見康平氏)とする。
 ポイントになったのは、インサイトのシステムを流用した低コスト化と、パッケージングの工夫による荷室空間の確保だ。エンジン、モータ、インバータ、そしてNi-MH(ニッケル水素)2次電池などの主要部品はインサイトと共通化した。一方、荷室床面の高さを下げるため電池パック冷却用ダクトのレイアウトは変更した。
 その違いを示したのが図2。インサイトでは荷室の床が高いため、電池パックとインバータの上に、室内からの空気を取り込んで排気する冷却・排気用ダクトを重ねた。一方、フィットでは電池パックの後ろ側から吸排気するレイアウトに改め、ダクトも薄型として高さを抑えた。ダクトや取り付け用フレーム、樹脂製のケースなど最小限の変更で対応した。

以下、『日経Automotive Technology』2011年1月号に掲載
図2 ホンダ「フィットハイブリッド」は吸排気ダクトのレイアウトを変更
「インサイト」では電池パックの上側に吸排気ダクトがあり、荷室床面が高かった。フィットでは、荷室床面の高さを下げるため電池パックの後ろ側から吸排気し、ダクトも薄くした。
[画像のクリックで拡大表示]

Part 3:DCT、AMTに適用

全長短くするクラッチ機構 モータを変速機の軸に並行配置

1モータ式のハイブリッドシステムはモータとクラッチのスペースが搭載上の制約になる。これを解決するために開発されているのが、モータ内側にクラッチを組み込む構造だ。ハイブリッド化しても変速機の全長が変わらなければ、車両のレイアウト変更は不要になる。DCT(Dual Clutch Transmission)やAMT(Automated Manual Transmission)へのハイブリッドシステムの適用も今後進みそうだ。

 燃費や加速時間といったハイブリッド車(HEV)の性能指標はシステムによって大きく変わる。トヨタ自動車が先行する2モータ式は、加減速の多い場合の燃費改善効果に優れているが、高速走行では、モータの回転数が高くなるため効率が落ちてくる。一方、商品化が相次ぐ1モータ式のHEVは、制御は難しいものの、高速ではエンジンが主体になるので燃費を向上させやすい。
 Part2では、主に1モータ2クラッチ式の方式を見てきたが、モータを自動変速機(AT)に組み合わせる例が多かった。しかし、HEVではこのほかにも様々な方式があり、部品メーカーやエンジニアリング会社が開発に取り組んでいる。ATと組み合わせる場合でも、クラッチがより小型になれば、搭載性は上がる。そこで、クラッチを小型化する技術、さらにDCTやAMTなどすでにクラッチを持つ変速機にモータを組み合わせる例を見ていく。

以下、『日経Automotive Technology』2011年1月号に掲載

Part 4:補機類の電動化が加速

操舵した時だけポンプを回す 倍力装置をモータだけで実現

HEVの燃費改善効果を高めるために重要なのが補機類の電動化だ。電動化によって必要な時だけ動かすことで補機類の効率を高められる。この代表例が日産のフーガハイブリッドで採用した新開発の電動油圧パワーステアリング。また、ブレーキの倍力装置では回生協調を実現する世界初の電動式を搭載した。反力を発生させる機能をばねに持たせたことで構造も簡素化できた。

 日産自動車が発売した「フーガハイブリッド」は補機類の電動化も進めた。工夫したのは、既存の部品をうまく活用しながら、電動化を図ること。それによって、レイアウトやシステムを大幅に変えずに成立させた。ともに世界初とうたうのが、操舵する時だけポンプのモータを回転させて燃費改善効果を高めた電動油圧パワーステアリングと、倍力装置をモータのみで構成する回生協調ブレーキ。いずれも日立オートモティブシステムズが製造を担当する。
 これまでフーガは油圧パワーステアリングを使っていた。HEVでは既存のステアリングラックを使いながら、電動油圧ポンプを追加した(図3)。約2%の燃費向上効果があるといい、これは通常の電動油圧パワーステアリングを0.3ポイント程度上回る。通常の電動油圧ポンプは、モータ回転数は変えるものの停止することはなく、これによって効率に差が出る。

以下、『日経Automotive Technology』2011年1月号に掲載
図3 「フーガハイブリッド」の電動油圧ポンプ
油圧式パワーステアリングのラックを使い、ポンプ部だけを電動化した。

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