「工作機械よ、おまえもか」。2010年9月13~18日に米国シカゴ市で開催された工作機械見本市「IMTS2010(シカゴショー)」の最大のニュースは、急速に実力を高めてグローバル企業へと変貌を遂げた日本以外のアジアメーカーが存在感を増したことだ。

 既に電機業界では韓国Samsung Electronics社やEMS企業の台湾Hon Hai Precision Industry社、自動車業界では韓国Hyundai Motor社といったグローバル企業が続々と登場し、日本メーカーの前に立ちふさがっている。グローバル企業になれず国内市場に大きく依存する日本メーカーの多くは、こうしたアジアのグローバル企業にほとんど歯が立たない状況に追い込まれている。

 だが、これまで工作機械業界はそうはならないと、まことしやかにいわれてきた。「高い精度と優れた品質を、擦り合わせ技術を駆使して造り上げる工作機械は日本の『お家芸』。購入部品を組み立てるだけで比較的簡単に造れるデジタル家電のようなモジュラー型製品とは異なり、一朝一夕に良い製品は造れない。そのため、アジア勢との競争力の差は大きい」──と。

 しかし、日本の工作機械業界に対するこうした評価は、実は過去のものになりつつあるのではないか。今、韓国と台湾から工作機械のグローバル企業が誕生し、中堅以下の日本の工作機械メーカーを追い落としながら米国市場で大きなシェアを奪っている。電機業界や自動車業界で起きたことが、ついに工作機械業界でも起きているのだ。

〔以下、日経ものづくり2010年11月号に掲載〕