三菱重工業の工作機械事業部は、軽くできるエンジン用「傘中空」バルブの量産体制を整えた。従来の中空バルブに多かった「軸中空」バルブに比べ、最大2割軽くできる。鍛造なので、後から機械加工で穴を空けて中空にする場合に比べて製造コストを大幅に抑えることができた。

 エンジンのバルブを中空にする技術は古くからある。目的は軽くすることと、放熱を良くすることである。バルブの傘部や傘のそばの軸部の強さを決めるのは軸力ではなく、実は曲げ疲労である。このため中心線近くの肉を抜いてもマイナスは少なく、軽くすることのプラスが大きい。また、軽くなればバルブが着座するときの衝撃荷重が小さくなり、巡り巡ってさらにバルブを軽くできる。
 中空バルブでは、放熱を良くするため、中空部にNa(ナトリウム)を封入することができる。Naの融点は98℃である。エンジンが回っている間は液相であると考えてよい。Naはバルブの往復運動に遅れて上下に運動する。バルブを基準に見るとNaがバルブ内を上下に往復し、熱を傘部からバルブステムに運ぶ。運ばれた熱はバルブステムからバルブガイドを介して、シリンダヘッドの水路に抜けていく。

以下、『日経Automotive Technology』2010年11月号に掲載