「技術がコミュニケーションを可能にし,コミュニケーションが人々をつなぐ」。ノーベル物理学賞を受賞したAlbert Einstein氏は,1930年にドイツで開かれた放送関連の展示会の基調講演で当時の新技術だったラジオに触れ,こう語ったという。それから80年。その展示会は民生機器全般に範囲を広げ,「IFA」となった。今年で50回目を迎えた同展示会は,来場者数23万5000人と過去最大規模。欧州は,3次元(3D)映像や,デジタル家電向けのインターネット・サービスなどの新技術に沸いている。

欧州でも盛り上がる3D対応機器

 「コミュニケーション手段の革新によって,創造的な生活スタイルを実現できる。今,我々が見た未来は,既にここにある」

 「IFA 2010」で基調講演の舞台に立った米Google Inc., CEO(最高経営責任者)のEric Schmidt氏は,こう話を締めくくった。スマートフォン向けの音声入力の新技術とともに講演で見せたのは,ソニーや米Intel Corp.などと共同開発を進めるインターネット・テレビ「Google TV」のデモだ。

 Google社のソフトウエア基盤「Android」を使うGoogle TVは,テレビ放送の番組やインターネットで配信される動画などから,所望の映像コンテンツを検索できる機能を備える。放送とインターネットの垣根を越えて映像コンテンツを探し出せるさまを披露したSchmidt氏は,これぞインターネット業界が提案するテレビの将来像と言わんばかりに胸を張った。

近未来と今が交差

 今回のIFAは,Schmidt氏が講演で見せたような近未来と,デジタル家電の今が交差する展示会だった。「今」を象徴する技術は,3次元(3D)映像への対応である。大手家電メーカーのブースには,所狭しと3D映像の表示に対応した薄型テレビなどが数多く並んだ。

 既に,薄型テレビやBlu-ray Disc(BD)プレーヤーといった3D対応品を欧州で投入済みのパナソニックや韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.,ソニーなどに続き,シャープや東芝が2010年秋から同年末にかけて3Dテレビを欧州で発売すると表明した。ビデオ・カメラや家庭用プロジェクターでも3D対応品が登場するなど,欧州での3D時代の幕開けを感じさせた。クリスマス商戦に向けて,3D対応品を巡る各社のシェア争いが激しさを増すことになりそうだ。

『日経エレクトロニクス』2010年10月4日号より一部掲載

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