「技術者のための最新中国事典」は、中国に詳しいコンサルタントであり、現役の技術者でもある遠藤健治氏が、最新の中国事情を伝えるコラムです。変化が激しい中国のものづくりや市場、人々の文化や習慣など、日本企業のビジネスチャンスにつながり得る「今」の情報を素早くとらえ、独自の分析や対策などのヒントを技術者向けに提供します。

 中国政府が、日本の新幹線の技術を使った高速鉄道を世界に売り込もうとしています。中国が日本企業から車両や技術を導入し、運用を開始したのは今から数年前のこと。それがもう、海外に向けて「中国製新幹線」を販売しようというのです。日本側には技術の盗用を主張する人もいますが、中国政府はどこ吹く風。日本の新幹線よりも高速に走行できる技術を開発したなどと海外にアピールしています。

 知的財産権の保護に関しては議論のあるところですが、我々日本人としては学ぶべきところがあります。それは、中国市場におけるビジネスのスピードです。中国で仕事をしていると至る所で「快一点」という言葉を耳にします。これは「早くしろ」という意味。何でもとにかく早く実行に移すというのが、中国流ビジネスの「常識」なのです。

〔以下、日経ものづくり2010年10月号に掲載〕

遠藤健治(えんどう・けんじ)
技術者・海外進出コンサルタント
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者で、海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場にて製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国をまたにかけて活躍中。著書に『日系中国工場製造部長奮闘記』『中国低価格部品調達記』(共に日経BP社)などがある。