「技術者のための最新中国事典」は、中国に詳しいコンサルタントであり、現役の技術者でもある遠藤健治氏が、最新の中国事情を伝えるコラムです。変化が激しい中国のものづくりや市場、人々の文化や習慣など、日本企業のビジネスチャンスにつながり得る「今」の情報を素早くとらえ、独自の分析や対策などのヒントを技術者向けに提供します。

 「90后」を抜きに、これからの中国は語れません。90后とは「1990年代生まれの人」という意味です。同じ中国人でも、90后とそれ以前に生まれた人とでは、考え方や行動のパターンが大きく異なります。今後、中国市場では現在20歳以下のこうした若者が市場をけん引し、ビジネスの主役になっていくのです。

 ところが、こうした変化を多くの日本人は認識していません。それどころか、今なお中国人について画一的な印象を抱いている日本人が少なくないのです。しかも不思議なことに、その印象はここ15年ほど変わっていないようです。つまり、私が日系メーカーの中国工場に管理者として初めて赴任した1990年代半ばに、部下として接した中国人社員の印象のままなのです。

 すなわち、家族に仕送りをするために、貧しい農村から沿岸部の都市に出稼ぎにやって来た。十分な義務教育を受けていないことから、頭脳をフル活用するような職務の遂行能力はあまり高くなく、少々身勝手なところもある。それでも、かんで含めるように言い聞かせればきちんと理解してくれる。基本的には素朴でまじめな人たち──というものです。

〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕

遠藤健治(えんどう・けんじ)
技術者・海外進出コンサルタント
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者で、海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場にて製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国をまたにかけて活躍中。著書に『日系中国工場製造部長奮闘記』『中国低価格部品調達記』(共に日経BP社)などがある。