日本銀行は、2010年7月中旬に開いた金融政策決定会合で、2010年度の国内総生産(GDP)の実質成長率の見通しを1.8%から2.0%に上方修正することを決めた。日本メーカーによる新興国向けの輸出が伸びているためだという。リーマンショックで一気にどん底に突き落とされた日本経済が、「予想以上の早さで回復している」と日本銀行は見ているわけだ。

 しかし、製造業の現場では、そんな景況を単純に喜ぶ余裕などないようだ。製造業に従事する人を対象に、「約1年前(リーマンショックの約1年後)に比べて、1人当たりの仕事量はどう変化しているか」を聞いた(Q1)。すると、全体の44.0%の人が「1割を上回る増加」と回答した。そのうち、「3割を上回るが、5割以下の増加」が11.5%、「5割を上回る増加」は5.0%に上った。その一方で、「1割を上回る減少」と答えたのは、全体の13.5%にすぎなかった。

 この結果から想像できるシナリオはこうだ。リーマンショックで売り上げを激減させた企業は、人員削減に着手した。その後、徐々に売り上げが回復したものの、人員補充は先送りに。その結果、1人当たりの負担が増えた。つまり、回復に人員補充が追い付いていない可能性である。

〔以下、日経ものづくり2010年8月号に掲載〕

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