デジタル制御電源の適用領域

 AC-DC電源やDC-DCコンバータなどの小型化・高効率化に寄与するとされ,5年ほど前から注目を集めてきた電源のデジタル制御。この「デジタル電源」の適用のすそ野が,ここ1年ほどでジワリと広がってきた。

 従来,デジタル電源は無停電電源装置(UPS),通信機器,サーバー機,太陽電池用パワー・コンディショナといったインフラ向けのごく一部の機器での導入にとどまっていた。それが最近になってLED照明や自動車,産業機器,さらには一部の民生機器においても,デジタル電源の採用事例が出始めたのだ。

安価なDSP登場がキッカケ

 デジタル電源のすそ野が広がり始めた最大の要因は,単価が100円台~数百円と安価な電源制御ICが,デジタル電源向けにも登場してきたからである。 100円を切るような通常のアナログ型の電源制御ICに匹敵する範囲にまで,デジタル電源の制御ICのコストが下がった。具体的には,米 Microchip Technology Inc.,米Texas Instruments Inc.(TI社),新日本無線といった半導体メーカーが,デジタル電源専用の安価な制御ICを2008年ごろから相次いで商品化した。最近,実用化されたデジタル電源の多くが,これら企業のICを採用している。

『日経エレクトロニクス』2010年7月12日号より一部掲載

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