動的なWebコンテンツの作成・実行技術「Flash」などを提供するAdobe Systems社。2010年春に,Apple社が「iPhone OS」にFlashを採用しないことを表明し,両社の対立が取りざたされた。また,世界で急拡大する電子書籍市場でも,“影のキー・プレーヤー”として動向が注目されている。Flashや電子書籍について,Adobe Systems社 President and CEOのNarayen氏に聞いた。(聞き手は内田 泰,小谷 卓也=日経エレクトロニクス)

(写真:加藤 康)

── 米Apple Inc.がFlashをサポートしないことを表明しました。これによって,Flashコンテンツ作成などのツール「Adobe Creative Suite 5(CS5)」に加えたiPhoneアプリへの変換機能は,事実上使えなくなりました。

 我々は,Flashを使いたい人たちとビジネスを続けていくだけです。「マルチプラットフォーム,マルチデバイス」の時代になるのは明らかですから,Flashを採用したいと考える企業はたくさんあります。それは,携帯端末などでのFlashの利用を促進するために,FlashとAIR(Adobe integrated runtime)のライセンス料を無料にする「Open Screen Project」の参加企業のリストを見てもらっても明らかでしょう。

 確かにApple社は,Flashをブロックするという選択をしました。ただし,我々にとってはCS5のiPhoneアプリへの変換機能の開発をストップするだけの話です。世間の関心は,なぜかそこに集まっているようですが,我々は既に新しい一歩を踏み出しています。

── Open Screen Projectでは,どのようなビジネスを展開していくのでしょうか。

 我々は,実行環境を無料にして,オーサリング・ツールで収益を上げ続けるというビジネスモデルを展開しています。PDFがここまで成功したのも,無料のリーダー・ソフトウエアがこれだけ広がったという前提があったためです。Open Screen Projectも,その一環です。

『日経エレクトロニクス』2010年6月28日号より一部掲載

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