【強さの秘密】望遠鏡や宇宙関連機器の開発で培った技術を基に、ニッチ市場である手術用顕微鏡スタンドで独自の製品を展開。特許を武器に、ドイツの大手光学機器メーカーとの業務提携を有利に進めるなど、アイデアと技術を盾に世界市場でトップシェアを誇る。

 三鷹光器は、天体望遠鏡の製作からスタートした精密光学機器メーカー。2007年に打ち上げられ、今も飛行中の月周回衛星「かぐや」にも同社製の観測機器が搭載されるなど、業界では技術力に定評がある。もっとも、それらの宇宙関連機器が主力製品だったのはかつてのこと。現在、売上高の6割を占めるのは医療用機器だ。

 「望遠鏡の製作で機械技術と光学技術を培い、人工衛星で電子技術を学んだ。3つの技術がそろったところで、総合力が求められる医療機器の世界に飛び込んだ」と、同社社長の中村勝重氏は語る。中でも脳神経外科手術用の顕微鏡システムでは、世界シェアの5割強を占めるトップ企業。出荷台数の9割以上が海外向けで、三鷹光器の名は国内よりもむしろ海外でこそ知られている。大手光学機器メーカー、独Leica Microsystems社へのOEM供給が中心で、海外ではLeica社が三鷹光器製のスタンドに自社のレンズユニットを搭載して、Leicaブランドとして販売している。

 シェア拡大の原動力になったのが、1994年に開発した「オーバーヘッド(OH)スタンド」。手術の執刀者の背後から回り込むアーム構造を持つ、ユニークな形状の顕微鏡スタンドだ(図)。それまでの顕微鏡スタンドの主流は、手術台の横に設置するタイプだった。

〔以下、日経ものづくり2010年5月号に掲載〕

図●外科手術用顕微鏡の「OHスタンド」
使用時は執刀者の後ろに置かれ、頭上からアームが回り込む(a)。(b)は、2009年に発売した最新機種。質量は220kgと、シリーズ最軽量で可搬性が高い。