シャープの開発品と従来品(「SH505i」搭載品)の比較

 シャープは,裸眼で3次元(3D)映像を見られる携帯機器向けの液晶ディスプレイを開発し,2010年上期に量産を開始する。同社の中小型液晶事業に占める3D対応品の出荷比率として,「2010年度は10~20%,2011年度以降は50%程度を見込む。将来は現行の2次元(2D)対応品をすべて3D対応品に置き換える」(同社 常務執行役員 液晶事業統轄 兼 液晶事業本部長の長谷川祥典氏)と強気だ。具体的な顧客は明言しないが,任天堂が2010年度中に発売予定の裸眼対応の3Dディスプレイを搭載する携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」(仮称)に採用されるとの見方が強い。

 開発品は,裸眼での3D映像表示に「視差バリア方式」を採用する。具体的には,映像表示用の液晶パネルの前面に,光を遮断する短冊状の視差バリアを形成可能な「スイッチ液晶パネル」を配置する。表示用液晶パネルは,視差バリアの方向に合わせて左目用と右目用の映像を1画素ごとに表示する。左目用の映像は左目に映る一方で右目では視差バリアで遮断されて見えなくなり,右目用の映像ではその逆のことが起こる。これにより,裸眼での立体視が可能になる。

精細度と輝度は2倍に向上

 視差バリア方式は100年以上前に開発された技術であり,目新しいものではない。シャープ自身,2002~2006年の間,同方式を用いた3D液晶ディスプレイを量産していた。当時は対応コンテンツが少なかったほか,画質での課題も多く,「決して成功したとは言えない」(同社の長谷川氏)。

『日経エレクトロニクス』2010年4月19日号より一部掲載

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