ボッシュは2010年2月、報道関係者向けに勉強会を開催し、今後のEV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)など電動車両の普及に向けたシナリオを示した。2015年にはEVの需要が最低でも80万台になり「現在の2倍の生産量のLiイオン2次電池セルが必要になる」(ボッシュ専務の押澤秀和氏)とする。

 ボッシュは、電動車両の普及の予測として原油価格(バレル当たり)を基に三つのシナリオを挙げる(図)。これらは、基本シナリオ(原油価格130ドル)、燃費志向シナリオ(同230ドル)、EV普及シナリオである(同280ドル)である。電池の価格も条件に含まれており、原油が高くなるほど電池は量産効果で安くなると想定した。基本シナリオではEV用電池が275ユーロ/kWhであるのに対し、EV志向シナリオでは約半分の150ユーロ/kWhになる。
 基本シナリオと燃費志向シナリオの主な違いは、電動車両の台数である。基本シナリオが20万~30万台程度で推移するのに対し、燃費志向シナリオでは40万~60万台程度となる。
 これが、EV志向シナリオになると、電動車両の台数が80万~130万台程度に増える。しかも、EVの比率は約30%を占め、基本シナリオや燃費志向シナリオの2倍に増えることになる。EVは1台当に搭載する電池の量がHEVに比べて多くなるため、EV普及シナリオでは、基本シナリオと比べた台数の増加以上の電池が必要になる。

以下,『日経Automotive Technology』2010年5月号に掲載
図 Liイオン2次電池の需要予測
原油と電池の価格に応じて三つのシナリオを考える。基本シナリオは手堅く見積もったもので、EV志向シナリオはEV化が加速した場合である。