温室効果ガス削減や省エネルギーが叫ばれる中,国内で高い注目を集める「家」がある。三菱総合研究所の理事長で,東京大学 前総長の小宮山宏氏の自宅だ。「小宮山エコハウス」と呼ばれるその住宅は,太陽電池パネルやヒートポンプ式給湯器(エコキュート),複層ガラスによる断熱構造などを取り入れた,省エネルギー対策が施されている。低炭素社会が目指す方向性を示しているとして,鳩山政権の重要閣僚が視察に訪れるほどだ。小宮山氏はこのエコハウスに限らず,さまざまな施策を通じて,地球環境問題の解決や日本企業の国際競争力向上,日本の教育問題に取り組んでいる。「議論よりも答えを」を標榜する同氏に,環境問題と日本の製造業の将来について聞いた。(聞き手は本誌編集長 田野倉 保雄,蓬田 宏樹=日経エレクトロニクス)

(写真:新関 雅士)

──民主党政権は温室効果ガスの排出量を,2020年までに1990年比で25%削減するとの目標を掲げました。この数値をどう見ていますか。

 25%の削減目標というのは,日本の「モノづくり」を担う企業にとって,絶好のチャンスだと思う。日本の企業は,ターゲットさえ決まればすさまじい力を発揮する。CO2をこれだけ減らすという目標に合う形で,世界トップクラスの製品を作れるはずだ。

 僕は,日本のモノづくり力は世界一だと思っている。特に,これまで世の中にないものを作るというときに,日本の企業が発揮する力は本当に素晴らしい。例えば,温室効果ガスを削減する目的でLED照明に注目が集まっているが,そのためのデバイスを最初に作ったのは,やはり日本だった。素材から,目的に適合した製品を作り込む力があるのが日本の強みだ。

 温室効果ガスを削減するためには,さまざまな分野においてエネルギー効率を高める必要がある。例えば発電所の発電効率や,自動車のエネルギー利用効率などだ。これらの数値で,日本企業の製品は世界トップレベルにある。25%の削減目標を立てたことで,日本の強みをより発揮しやすい環境になるだろう。

『日経エレクトロニクス』2010年3月22日号より一部掲載

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