ポスト・フラッシュ・メモリやポストDRAMを狙う新型メモリ開発が節目を迎えた。従来はメモリ・セルなどの要素技術レベルでの開発が中心だった抵抗変化型メモリ(ReRAM)や,垂直磁化を利用したスピン注入方式MRAMなどの新型メモリが,一定規模のチップ試作が不可欠とされる半導体回路技術の国際会議「International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)」に初登場したからだ。そこで明らかになった潜在能力は,多くの技術者の予想を上回った。一歩先に登場した相変化メモリは試作チップの容量が1Gビットに到達し,NORフラッシュ・メモリの代替が見えつつある。

勢いづく新型メモリ

 「64Gビット品の製品化と,少量量産を2012年に開始する。容量は256Gビット品になる可能性もある」(米Unity Semiconductor Corp.,Vice President of Design EngineeringのChristophe Chevallier氏)。

 メモリ開発を手掛けるベンチャー企業であるUnity社が,メモリ・カードやSSD(solid state drive)用の記憶媒体であるNANDフラッシュ・メモリの代替に名乗りを上げた。開発中の抵抗変化型メモリ「CMOx」でNANDフラッシュ・メモリを上回るコスト競争力を達成し,巨大市場を手中に収めることを目指す。2010年2月上旬に開催された半導体回路技術の国際会議「International Solid-State Circuits Conference(ISSCC) 2010」での論文発表後,本誌の取材に対してこのような計画を明らかにした。

NANDを上回るコスト競争力

 Unity社のCMOxは,ポスト・フラッシュ・メモリやポストDRAMを狙う新型メモリが転換点に差し掛かったことの象徴的な事例と言える。新型メモリの研究開発は,これまではメモリ・セルなどの要素技術レベルでの検討が中心だったが,ここにきてチップ・レベルでの試作が可能になり,本格的な実用化が見えてきたからだ。例えば,今回,ISSCCに初めて登場した,垂直磁化を利用したスピン注入方式MRAM。開発を手掛ける東芝は,垂直磁化技術の採用により,DRAMの代替に本腰を入れる構えだ。

 これらの新型メモリがISSCC 2010で示した潜在能力や実力をいかんなく発揮すれば,巨大メモリ市場の主役がガラリと入れ替わってもおかしくない。

『日経エレクトロニクス』2010年3月8日号より一部掲載

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