竹野 和彦
NTTドコモ 移動機開発部 技術推進担当 担当部長

携帯電話機の機能向上は,とどまることなく続いている。その一方で,「電池切れ」に不安を抱くユーザーも多い。NTTドコモは,自らワイヤレス給電システムの技術検討に乗り出した。充電を容易にできるようにすることで,ユーザーが自宅や外出先で,電池の残量を意識せずに済むことを目指す。同社の開発担当者が,開発の狙いや今後の課題を解説する。(本誌)

本記事は,2009年10月8~9日に本誌が主催したセミナー「NEテクノロジー・シンポジウム2009 @CEATEC」で,NTTドコモの竹野和彦氏が行った講演の内容を基に加筆・編集したものである。

電池切れの不安をワイヤレス給電が解決
携帯電話機が高機能になるにつれて,電池残量が気になる機会が増えた。「いつでも・どこでも」をコンセプトに掲げるワイヤレス給電は,こうした不安を解決する次世代技術として注目を集める。

 通信やアプリケーションの性能向上が進むにつれて,携帯電話機は我々にとってより身近な存在になった。ただ,その一方で消費電力は増大し,ユーザーから「電池の持ちが悪い」といったおしかりの言葉を頂くこともしばしばである。当社は,携帯電話機のユーザーの利便性向上のため,次世代型のLiイオン2次電池や燃料電池,ワイヤレス給電,太陽電池などさまざま技術の開発に取り組んでいる。

 本稿では,6年ほど前から取り組んでいるワイヤレス給電に焦点を当て,開発の背景から技術概要,解決すべき課題について紹介する。

携帯電話機の進化を支える

 携帯電話機はこれまで,とどまることなく進化を続けてきた。象徴的なのが広域通信だ。通信速度は1990年代の第2世代(2G)で最大64kビット/秒だったものが,2000年代に導入された第3世代(3G,3.5G)では数Mビット/秒まで向上した。その後も技術の進歩は続き,数年後には最大で 100Mビット/秒を超えるような超高速通信を実現できるだろう。それに従い,動画のような,データ量の多いアプリケーションが増えてくるはずだ。

 そうなると,「電池切れ」に不安を抱く機会が増えることは想像に難しくない。従来,連続待ち受け時間や連続通話時間の伸張は,2次電池の技術革新によるところが大きかった。現在もLiイオン2次電池の性能向上は進んでいるものの,あくまで電気化学のメカニズムで進化するので,急にエネルギー密度が1~2 ケタ向上することは考えにくい。

『日経エレクトロニクス』2010年2月22日号より一部掲載

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