事故に至らなかったのは,単に運が良かっただけという経験が皆さんにもあるかもしれない。しかし,現実には多くの痛ましい事故が起きていて,我が国でも労働災害事故で毎年1000数百人の方が亡くなられている。
人身事故が起きた場合は警察が捜査することになり,その結果,個人の過失が原因とされることが多い。ところが冷静に考えてみると,人間が間違えたり失敗したりするのは当たり前。機械も故障するが,人間と比べれば,けた違いに信頼性は高い。従って,現在の安全理論では人間の注意力や作業能力に頼る前に,機械設備側で安全を図ることが鉄則になっている。
〔以下,日経ものづくり2010年3月号に掲載〕
明治大学 理工学部情報科学科 教授