フルHD対応の37型液晶パネルを酸化物半導体TFTで実現

 「酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)の開発は,基礎研究から量産を意識した段階へ移った」(ディスプレイ技術のコンサルタント)──。現行のSi TFTに比べて,高精細の液晶パネルや大型の有機ELパネルを駆動できる酸化物半導体TFT。その開発が急ピッチで進展している。

 それを象徴するのが,台湾AU Optronics Corp.(AUO社)が開発した,酸化物半導体TFTを使ったフルHD(1920×1080画素)対応の37型液晶パネルだ。同社は,酸化物半導体TFTに関する国際会議「International Workshop on Transparent Amorphous Oxide Semiconductors(TAOS 2010)」(2010年1月25~26日)で,これまで20型未満にとどまっていたパネル寸法を一気に液晶テレビの普及価格帯の寸法に引き上げたことを発表し,参加者を驚かせた。同社の発表を聞いたある大手ディスプレイ・メーカーの技術者は,「Si TFTが酸化物半導体TFTに完全に置き換わる可能性さえ感じた」という。

 精細度が4K×2K(4000×2000画素級)以上でフレーム・レートが240Hzを超える液晶パネルや,40型を超える有機ELパネル。AUO社の成果を契機にこうした,Si TFTでは手が届きにくかった次世代パネルを酸化物半導体TFTで開発する機運が高まりそうだ。

『日経エレクトロニクス』2010年2月22日号より一部掲載

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