「新人にも分かる 工場安全のツボ」は,生産現場における本質安全構築の基礎を学べるQ&A方式のコラムです。現場で悩むことの多い工場安全の疑問とその回答を通じて,真の工場安全を実現するために必要な考え方や手法を紹介していきます。

【Q1】工作機械/ハンドリング用ロボット/搬送用コンベヤを組み合わせて,部品の生産ラインを構築することになりました。統合生産システム(IMS)の場合は,最初に「(仮レイアウトを含む)仕様の決定」を行うのがポイントだと聞きましたが,どのように安全対策を進めればよいでしょうか?

 前回は,複数の機械/装置から成るIMSについて取り上げ,関連する国際規格(ISO11161)の概要を紹介しました。今回は,具体的な生産ラインを題材として,実際の安全対策の進め方を説明していきます。

 IMSを構築する場合,外部から購入した機械/設備の配置(レイアウト)を,基本的に自分たちで考案することになります。そのため,危険源や危険事象の同定,リスクの評価を行う前に,レイアウトを仮決めしておかなければなりません。その際には,IMSにおける工程間の関係や作業者の動線といった条件に配慮します。

 さらに,IMSには「生産上の目的」(今回の例では,部品の製造)があり,これを満たしていなければどれだけ安全性を高めても意味がありません。従って,生産上の目的を実現することを前提にして,作業者の安全を確保するためのさまざまな対策を行います。生産上の目的と安全の両立が求められているわけです。

〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

西原一寛(にしはら・いっかん)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
IDEC技術本部規格安全ソリューションセンター室長。各種検出制御機器・機械安全制御機器・防爆安全制御機器の製品開発および事業企画に従事。現在,安全関連の講演のほか,機械装置メーカー/ユーザーに対し,リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
前田育男(まえだ・いくお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
機械,制御,安全,防爆などに関する国際規格,欧州・北米各国規格/規制に基づく製品認証関連業務やリスクアセスメント支援に従事。現在,制御・安全技術に関するIEC(国際電気標準会議)の委員をはじめ,ロボット技術,防爆技術,機能安全技術,半導体製造装置関連の標準化活動に携わる。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
関野芳雄(せきの・よしお)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全制御設計技術者として多くの製品開発に携わり,現在は,グローバルに通用する本質安全設計/安全防護の考え方などの安全技術指導や安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格作成の国際委員としての経験を基に,機械メーカー/ユーザーに対する各種リスクアセスメント支援を行う。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。
岡田和也(おかだ・かずや)
IDEC 規格安全ソリューションセンター
安全機器,システム,ネットワークなど,安全制御設計技術者としての経験を有し,現在は,ロボット制御セル生産システムのリスクアセスメントや安全システム設計に従事。ISOロボット安全規格の国際委員会委員,安全技術応用研究会専門委員会委員などの規格関連委員を務める。セーフティ・リードアセッサ資格を有する。