「うちの社員(メンバー)は言わないと動かない。自分から気を利かせて仕事をしてくれたらいいのに…」。これまで多くの会社の経営者や管理者からこうした言葉を聞いてきました。今も昔も変わらず,多くの管理者が同じ思いを抱いているようです。しかし,メンバーの人材育成に責任を持ち,厳しい競争に打ち勝つ職場を構築しなければならないこれからの時代,こんな愚痴を言っても何も前に進まないと思います。
もう一度,冷静に考えてみましょう。そうした「ふがいない社員」にしてしまっている原因は,その社員だけではなく,上司である管理者自身にもあるのではないでしょうか。というのは,社員の成長は育成次第で大きく変わってくるからです。
入社時の社員は夢と希望にあふれ,誰でも「上司から言われたら一生懸命にやろう」と思っています(図)。優秀な社員,すなわち「人財」というプラスの成長,ダメな社員,すなわち「人在」や「人罪」というマイナスの成長という見方をすると,入社時はプラス・マイナス・ゼロの状態にあります。ところが,教育の仕方がマズイと「言われてできる範囲しかしない社員」「言われて適当にやる社員」と落ちていき,最後には「言われてもやらない社員」になってしまいます。逆に,うまく導くと「言われたことはしっかりやる社員」になり,続いて,言われたことをそのまま実行するのではなく,自ら工夫してやる社員へと成長します。そしてついには「言われなくてもやる社員」になるのです。
実は,この差は社員が置かれた育成環境によって生じることが多い。すなわち,管理者は育成の仕方によってメンバーを人財にも,人在や人罪にもしてしまうということです。これは,いろいろと調査した結果に加えて,これまでの私の経験からも言えることです。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕
HY人財育成研究所 所長