雑誌 特集

魅せる省エネ設計

2010/01/26 12:50
 

「エコポイント」や「エコカー減税」の追い風をとらえるべく,メーカーが一斉に省エネ製品の開発に力を注ぎ始めた。生活防衛色が強まる中,電気代やガソリン代の負担が減る製品に,これまで以上に注目する消費者が多いのは当然ともいえる。だが,その中でも,より多くの消費者に選ばれる製品と,それほどでもない製品がある。その差は,新たな省エネ設計に挑んでいるか否か。選ばれているのは,大きな省エネ効果を得られる上に,ユーザーが機能を実感できる製品だ。単に省エネをうたう従来の方法は通用しなくなりつつある今,新たな省エネ設計にどう挑むべきか。その指針を示す。(高野 敦,近岡 裕)

指針:性能だけでは満足できない,実感できることが必須条件に

 「信号待ちでエンジンが止まる自動車」「見ていないと画面が消えるテレビ」──。省エネルギ(省エネ)を前面に打ち出した製品が売れている。とりわけ人気なのは,省エネであることが直観的に分かる機能を備えた製品だ。小難しい理屈など考えなくても,誰もが省エネ効果を実感できる。これが販売面での成功につながっているのだ。

 例えば,マツダが2009年6月に発売した新型「アクセラ」。主力は,エンジン排気量が1.5Lと2.0Lのグレードで,前者は166万円から,後者は189万円からという価格設定である(共に税込み)。ここで,同社にとって想定外の事態が起きた。価格が20万円以上も高い2.0Lグレードの方が売れているのである。発売直後から現在まで,販売台数の比率は1.5Lの比率が4割強なのに対し,2.0Lは約5割に達する。

 2.0Lグレードが売れている理由は明白だ。1.5Lグレードにはない,自動アイドリング・ストップ機能が付与されているからである。信号待ちなどの一時停止時におけるエンジンの停止・再始動操作を自動で行い,ガソリンの消費を抑える。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

コントロール型:クルマが止まるとエンジンも止める,再始動までの時間を短縮

マツダ/デンソーのアイドリング・ストップ機構

 クルマを運転しているとき,信号待ちなどの一時停止でエンジンを止めて燃料の浪費を抑えるアイドリング・ストップ。バスではおなじみの光景となったが,一般消費者向け乗用車でもアイドリング・ストップを自動で行う機能を持つものが増えている(図1)。

 もともと欧州で採用が先行していたが,日本国内でもマツダが新型「アクセラ」(2009年6月発売)の一部グレードで導入したり,デンソーが同機能の開発を強化したりするなど,注目され始めている。アイドリング・ストップは,機能として分かりやすい上,肝心な燃費の改善についても大きな成果が見込めるからだ。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

図1●自動アイドリング・ストップ機能の概要
信号待ちなどの一時停止時にエンジンを停止し,動き出す直前にエンジンを再始動する。これらのエンジン操作を自動で行う。マツダの資料より。

コントロール型:テレビから離れると画面を消す,赤外線センサで指先の動きも検知

ソニーの液晶テレビ

 40インチ型以上の液晶テレビ受像機(以下,液晶テレビ)において,2009年のヒット商品となったソニーの「BRAVIA V5」シリーズ(図2)。顧客の多くが支持したのは,直感的に理解でき,その効果にも納得しやすい省エネ機能だ。具体的には,ユーザーがテレビを視聴していないときに,自動的に画面を消して電力の消費を抑える機能である。

 例えば,ドラマを視聴していたユーザーが食事を作ろうと台所に向かったときや,ソファで映画を鑑賞しながらうたた寝をしてしまったときに,この液晶テレビは音声出力を残したまま画面を消す「消画モード」に入る。そして,再びテレビを見ようと戻ってきたときや,起き上がったときには,再び画面をつけて映像を流す。もしも,30分以上戻ってこなかったり,静かに寝ていたりすれば,そのままスタンバイモードに入る。消画モードで得られる省エネ効果,すなわち消費電力は,テレビをつけっ放しにした場合と比較して約50%に抑えることができる。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

図2●液晶テレビ「BRAVIA V5」シリーズ
人が見ていないときに画面を消して省エネする機能を備える。画面がついているときには消費電力が「146.7W」となっているが(a),画面が消えると「56.0W」を示した(b)。

コントロール型:冷却と節電を見極めて運転,センサで生活パターンを学習

パナソニックの冷蔵庫

 パナソニックの2010冷凍年度の冷蔵庫「エコナビ搭載冷蔵庫」が好調な滑り出しを見せている(図3)。売れている理由は,分かりやすく,かつ誰もが納得できる省エネ機能「エコナビ」を搭載したこと。ドアを開閉しない時間帯は節電し,食品を取り出す直前はしっかり冷やす。例えば,店頭で販売員から「冷蔵庫のドアを開けることがめったにない夜中の寝ている間に,昼間と同じ強さで冷却する必要はないでしょう」との説明を聞けば,大抵の顧客は素直にうなずくだろう。

 つまり,冷蔵庫に求められる基本機能を満たしつつ,消費電力をしっかり抑えるのがエコナビだ。この機能を使うと,使わなかった場合と比べて消費電力量を冬期で約15%,夏期で約12%低減できるという。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

図3●冷蔵庫「エコナビ搭載冷蔵庫」

アドバイス型:ドアやカーテンの開閉まで助言,温度分布で部屋の状況を見抜く

三菱電機のエアコン

 最大で65%の省エネを実現するのが,三菱電機の2010冷凍年度の家庭用エアコン「霧ヶ峰ムーブアイNavi ZW」シリーズだ。「前冷凍年度モデルの2倍弱と,好調な売れ行き」(同社静岡製作所営業部ルームエアコン販売企画グループ専任の原田進氏)。その理由は,省エネ効果の高さに加えて,きめ細かい“助言”にある。

 リモコンを介し,部屋の状況に応じて,より省エネにつながる方法をアドバイスし,ユーザーがボタンを押すだけで自動的に省エネ運転を実現する。例えば,「カーテン・ドアが開いていませんか」「閉めると省エネできます」と表示する(図4)。これに従って開いているカーテンやドアを閉めれば,快適な空調を維持しつつ,効率的な運転ができるというわけだ。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

図4●省エネ設計をユーザーに実感させるリモコン
省エネ運転につながるアドバイスを表示し,ボタン一つで自動的に省エネ運転を実行する。アドバイスを表示する所には,節約できた電気代を示すこともできる。

アドバイス型:踏み込みすぎを触覚で伝える,モータのトルクを30%上乗せ

日産自動車のアクセルペダル

 日産自動車の高級車である新型「フーガ」。発売後1カ月の受注が目標の5倍を超えた。このクルマには,他社にないユニークな機能がオプションとして用意されている。ドライバーの触覚に訴えて低燃費運転を支援するアクセルペダル・システム「ECOペダル」だ(図5)。

 低燃費運転の領域から外れるほどアクセルペダルを強く踏み込むと,足に伝わる反力が大きくなる。燃費の良し悪しを視覚的に伝えて低燃費運転を支援するものはあるが, 「触覚に訴えるのは当社だけ」と,日産自動車パワートレイン開発本部パワートレイン性能開発部パワートレイン制御開発グループ主担の坂口重幸氏は胸を張る。これにより,燃費は5~10%向上する。ECOペダルを含むパッケージの装着率は約23%と見込みよりも多く,フーガの好調な滑り出しに一役買っている。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

図5●低燃費運転を支援するアクセルペダル・システム「ECOペダル」
通常のアクセルペダルに,電子制御ユニット(ECU)とモータ(トルクモータ)を追加した。踏み込み量が増えると,トルクモータのトルクを加えて反力を大きくする。

アドバイス型:実用燃費を高める運転に導く,加減速バーでコーチング

ホンダの低燃費運転支援

 ハイブリッド車の大きな魅力の一つは,優れた低燃費だ。例えば,日本市場における2009年の車名別新車販売台数で9万3283台を売り上げて第8位につけたホンダの「インサイト」の燃費は,10・15モードで30km/Lに達する(図6)。

 だが,この燃費の良さはあくまでも「潜在能力」だ。燃費はドライバーの運転次第で大きく変動する。例えば都心で急発進/急ブレーキを多用する荒い運転をすれば,ハイブリッド車であっても燃費が5km/L以下に落ちることもあり得る。ところが,そのことを忘れていたり,そもそも知らなかったりして,「ハイブリッド車を購入したのだから,当然燃費に優れるはず」と考えるドライバーは少なくないという。

 ハイブリッド・システムの導入により,ハードウエアの「基本性能は省エネ方向に大きく進化した。だが,それだけでは不十分。多くのドライバーに活用してもらわなければ意味がない」(ホンダ四輪R&Dセンター第5技術開発室第2ブロック主任研究員の藤木有司氏)。

 こうした思いから同社が開発したのが,低燃費運転支援システム「エコロジカル・ドライブ・アシスト・システム(Ecological Drive Assist System)」(以下,エコアシスト)だ。ドライバーの,燃費に対する意識を呼び覚まし,より低燃費の運転ができるように支援する。まずはインサイトに搭載し, 「今後もハイブリッド車には基本的に採用していく」(同氏)方針だ。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

図6●ハイブリッド車「インサイト」

リサイクル型:捨てていた霜を冷却に活用,冷気の通路を細かく制御

日立アプライアンスの冷蔵庫

 日立アプライアンス(本社東京)は,冷却器に付着した霜で庫内を冷却する技術「フロストリサイクル冷却」を開発し,2010冷凍年度(2009年9月発売)の冷蔵庫「R-Z6200」などで製品化した。これまでは捨てていた霜を冷熱源として利用することによって,年間消費電力量換算で約5%の省エネを実現している。

 ファンによって冷気を庫内で循環させる間冷式冷蔵庫が主流になった現在,一般のユーザーがその存在を目にすることはほとんどないが,冷蔵庫を使っていると次第に冷却器の表面に霜が付着する。この霜は,庫内の食品に含まれる水分や,扉を開放したときに外から入ってくる水蒸気などが冷却されて氷になったものである。

 冷却器に霜が付くと,冷却器付近の空気の流れが悪くなる上,冷媒と空気の熱交換効率が低下するので,冷蔵庫全体の冷却効率が落ちる。そのため,一般的な冷蔵庫では定期的にヒータによって霜を溶かし,水にして外に排出している。日立アプライアンスは,省エネの切り札としてこの霜に着目したのである。
〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕

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