日経テクノロジーオンライン
雑誌 2010年3月号 Cover Story

ブレーキの多能化が止まらない

2010/01/22 19:17
 

 クルマの基本機能である「走る」「曲がる」「止まる」。このうち、ブレーキはこれまで止まる機能を担ってきた。しかし最近のブレーキは、走る、曲がるといった機能にも、深く関与し始めている。ブレーキでスムーズに走る、ブレーキでエネルギを蓄える。これまでの粋を超えてブレーキの「多能化」が進む。

Part 1:拡大する応用範囲

「走る」「曲がる」の役割も担う 横滑り防止装置の義務化が後押し

ブレーキを、「クルマを止める」以外に応用しようという動きが急速に広がっている。クルマをスムーズに走らせるために使う、あるいはエネルギを蓄える、といったクルマの快適性・利便性を向上させる機能への応用が進んでいるからだ。その背景にあるのは、自律的にブレーキをかける機能を備えた横滑り防止装置の普及。横滑り防止装置の小型化・軽量化の進展が、こうしたブレーキの「多能化」を後押しする。

 ペダルを踏めば、クルマが止まる。こんなシンプルなブレーキのイメージは、もはや過去のものとなった。いくつもの工程を一人でこなす「多能工」のように、ブレーキでもさまざまな役割をこなす「多能化」が急速に進んでいるからだ。
 その一端をざっと挙げてみただけでも、車両の横滑りやスピンを防ぐ横滑り防止装置(ESC)、レーダやカメラで他の車両との衝突を検知して自動ブレーキをかけ、衝撃を軽減する「プリクラッシュ・セーフティ・システム」、先行車と接近しすぎたら自動的にブレーキをかけることで一定の車間距離を保つ「オート・クルーズ・コントロール(ACC)」、急勾配の道を下るときにブレーキを踏まなくても自動ブレーキにより時速10km以下を保つ「ヒルダウンアシスト」、坂道で発進する際に後退を防ぐ「ヒルスタートアシスト」など、枚挙に暇がない(図1)。

以下,『日経Automotive Technology』2010年3月号に掲載
図1 ブレーキの応用範囲が広がっている
従来の「緊急時に止まる」という役割から、通常走行時に、クルマを便利に、快適に、良好な燃費で走らせるための装置へと、適用範囲が広がっている。

Part 2:快適な走りを支援

スムーズなコーナリングを実現 シンプルな制御則の新理論も登場

ブレーキを多能化した代表的な例が、走行時に車線を維持するのを補助したり、コーナリングしているときに乗員が前後左右に揺さぶられるのを低減する機能だ。車両が危険な状態でなくても快適性や利便性を向上させるために作動する。ドライバーや同乗者に違和感のない制御の実現が難しい。スムーズなコーナリングをシンプルなロジックで実現する新たな制御理論も登場し、実用化を目指している。

 ESCの機能を通常走行時にも利用して、乗員の快適性を向上させるうえでポイントになるのは、同乗者に違和感を生じさせないことと、作動時の騒音を下げること。日産自動車が新型「フーガ」に搭載した「LDP(車線逸脱防止支援システム)」や「コーナリングスタビリティーアシスト」でも、まさにこの点が課題となった。
 このうちLDPは2009年7月に発売した「スカイラインクロスオーバー」に続いて採用したもの。ドライバーが意図せずに車線を逸脱しそうになると、警告音とメータ内の表示によってドライバーに注意を促すとともに、ESCにより片側の車輪にだけ制動力を発生させて、クルマの方向を曲げる力を短時間発生させ、車両を車線内に戻す(図2)。

以下,『日経Automotive Technology』2010年3月号に掲載
図2 LDP(車線逸脱防止支援システム)
ドライバーが意図せずに車線を逸脱しそうな場合に、音と表示で警告するとともに、ESCの機能を活用して車両を車線内に戻す力を発生させる。

Part 3:燃費向上を支援

回生協調機能を低コスト化 汎用部品の活用を推進

快適性や利便性の向上と並ぶ、多能化のもう一つの方向が、車両の運動エネルギを回収して燃費を向上させる「回生協調ブレーキ」の実現だ。これまで回生協調ブレーキはトヨタ自動車のハイブリッド車に代表されるように既存のシステムと共通点の少ない専用のシステムを採用する例が多かった。しかし、最近は低コスト化のために、ESCをベースに実現する流れが強まっている。

 2009年は、トヨタ自動車の新型「プリウス」が新車販売ランキング(軽自動車を除く)1位となり、ホンダの「インサイト」も5位に食い込むなど、ハイブリッド車(HEV)の普及元年となった。こうした状況の中で、今後「エネルギを蓄える」という新たな機能を加えたブレーキが増加することが予想される。それが回生協調ブレーキだ。
 回生ブレーキは、HEVや電気自動車(EV)で、制動時に車両の運動エネルギでモータを回転させることにより、電気エネルギとして回収するもの。ただし、回生ブレーキだけで必要な制動力が得られることは少ない。このため、通常の油圧ブレーキによる制動力と回生による制動力を協調させ、必要な制動力が得られるように構成したのが回生協調ブレーキである。

以下,『日経Automotive Technology』2010年3月号に掲載

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