最近,企業活動が何となくおかしくなってきたな,と感じるんです。「付加価値」という名の魔物に取り憑かれているんじゃないか,と。
企業にとって付加価値というのは,もともと生産を通じて生み出す価値のこと。ところが,最近の付加価値という言葉の使い方は「簡単にもうける」というふうに聞こえてしまう。実際,付加価値という言葉を利用して,商品の価格を安易に上げているところがあるでしょ,そんなのを見ると,簡単にもうけているだけじゃないか,自分たちの努力や技術はどうしたんだよ,と言いたくなってしまう。「付加価値を追求する」あまり,大事な「本質価値」を見失ってはいないか,と。今のものづくりには,この部分ですごく違和感を覚えています。
イタリアンレストランを展開しているサイゼリヤは,食を通して毎日の暮らしの豊かさを提案し,できるだけ多くのお客様を喜ばせたいと考えています。これが,私たちが求める本質価値。それには,毎日安心して食べていただけるように安くしなければいけない。料理の品質と価格のバランスを追求しながら,お客様には一番下限の価格で出す。当社の正垣泰彦会長をはじめ私たちは,そうでないと世の中のためにならないと考えています。
〔以下,日経ものづくり2010年1月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)
サイゼリヤ 代表取締役社長