吉野 彰
旭化成 フェロー, 吉野研究室 室長

Liイオン2次電池の発明者である旭化成の吉野氏は,全く新しい系を含む,新たな高エネルギー密度の電池開発を進めている。同氏が,Liイオン2次電池を超える次世代電池へのアプローチについて解説する。(蓬田宏樹=本誌)

 Liイオン2次電池は,初めての製品が市場に登場してから,15年が経過した。携帯機器から始まり,現在では電気自動車や家庭用蓄電地など,その用途拡大への期待は高まる一方だ。果たして,今後,どのような方向に進化していくのだろうか。Liイオン2次電池の創生期から携わる技術者として,今後の方向性について言及したい。

 まず,Liイオン2次電池の開発の歴史を少し振り返る。次に,現状の市場動向についてまとめる。最後に,次世代電池の望まれる姿について,解説する。

特性が高いLiイオン

 Liイオン2次電池とは,負極に炭素材料(カーボン)を,正極にLiイオン含有の金属酸化物を使う電池である。電解液には,非水系の有機電解液を使う。

 Ni-Cd2次電池やNi水素2次電池など水系の電解液を使う電池では,水が電気分解してしまうため1.5V以上の起電力を稼げない。非水系であるLiイオン2次電池の場合,高起電力にできるという優位性があり,利用しやすい。

『日経エレクトロニクス』2009年11月16日号より一部掲載

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