PLMシステムの導入で,かなりの工数を削減できたはず。
でも,それによって浮いた時間は,いったいどこへ消えたのか──。
設計者が前向きになれるシステムの構築が,大きなテーマになりつつある。
本誌が主催したセミナー「PLMコングレス2009」では,
設計者の負担を減らそうという意図の発表が目立った。
PLM(製品ライフサイクル管理)はこれまで,設計者を楽にしてこなかったのではないか,という反省が広まりつつある。製品の情報を製品企画段階から設計,製造,出荷,保守,回収または廃棄に至るまで,ものづくりに関するすべての工程で利用しようというのがPLMの考え方。情報を利用する後工程が助かるだけではない。情報を発信する設計者にとっても情報伝達の不備による手戻りがなくなり,より新規案件に集中できるメリットがある──はずだった。
だが,PLMはむしろ,設計開発全体にかかる工数とコストを削減する手段とされ,少ないメンバーで大量の業務をこなすためのツールとして利用された。その結果,表面的には設計者の生産性は上がり,成果物の量は増えた。
確かに, PLMの導入で,多品種少量生産の進展による設計案件数の増加にはうまく対応できたといえるかもしれない。しかし,個々の設計案件に設計者がかけられる時間は減っている。設計者が頭を使って考える時間も減った。より画期的な製品や,品質の高い製品を生み出すのではなく,日常業務に追われるようになってしまった。
設計者の負担は,だんだん限界に近づきつつある。「PLMコングレス2009」でのユーザー企業による講演に共通して見られたのは,設計者に無理をさせすぎたくない,という視点だった(図)。
〔以下,日経ものづくり2009年11月号に掲載〕