日本通信は,国内で初めてMVNO(仮想移動体通信事業者)ビジネスを開始した通信事業者だ。今後は,MVNO事業の展開を考えている企業を支援するビジネスを強化する。その最初の成果が,日本HPから2009年9月に登場した。プリペイド型通信機能を内蔵した小型ノート・パソコンである。日本通信 社長の三田氏に今後の展開などを聞いた。(聞き手は,内田 泰) 禎=日経エレクトロニクス)

(写真:加藤 康)

─日本ヒューレット・パッカード(HP)が発売した,プリペイド型データ通信機能内蔵の小型ノート・パソコン「HP Mobile Broadbandモデル」のインパクトをお聞かせください。

 インターネットの利用を前提とした小型ノート・パソコンは,一般に「ネットブック」と呼ばれています。市場は急速に伸びていますが,これまでは“真のネットブック”はなかったと思います。ユーザーが購入してからすぐに,インターネットを使えなかったためです。例えば,別途通信事業者と契約する必要がありました。

 HP Mobile Broadbandモデルは,初めて登場した真のネットブックです。購入後にパソコンを起動して,本人認証とクレジット・カード番号を入力するだけで,3G携帯電話網によるモバイル・インターネットのサービスが使えるようになります。最初から100分間の通信ができます。それがなくなれば画面上でチャージを指示すればいい。通信料は月額課金ではなく,「1分10円」の従量制ですから,使った分だけ支払う形になります。

 このモデルは,ユーザーの利便性を高めただけでなく,機器メーカーにとっても大きなメリットがあります。ユーザーがチャージする通信料は100%,日本 HPの売り上げになるからです。さらに,「1分10円」という通信料も日本HPが決定しています。例えば,将来,VoIP機能など何らかの付加サービスを機器に加えたときは,そのサービスを1分15円とか20円でも売れるかもしれない。サービスと料金体系の柔軟な設計ができるわけです。

 メーカー自身にこうした決定権があるのは,考えてみれば当然のことですが,これまでは違いました。ハードウエアに通信機能を付加した途端,付加価値を提供するのも大きな利益を得るのも通信事業者になってしまっていたのです。

『日経エレクトロニクス』2009年10月19日号より一部掲載

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